動物雑学

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道具を「作る」カラス?

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 カラスは大変賢い鳥として知られています。堅い木の実を自動車に割らせて食べられるようにしたり、数の概念まで理解できるという研究結果もあります。
 しかし、知られている中で道具を作ることのできるカラスは一種しか知られていません。

 その名はカレドニアガラス。ニューカレドニアのグランドテール島に生息しているカラス。ごく狭い地域にしか生息していないとても珍しいカラスです。

 


 そもそもカラスとは

 

 

 小型鳥類の所属するスズメ目の中でかなりの大きさを有するカラス科に分類される、カラス属と言うグループの鳥を総称してカラスと呼んでいます。
 世界中に生息しており、黒い羽毛がトレードマーク。知能が非常に発達しており、遊ぶのが大好きです。頭がいいことは古くから知られており、「烏と水差し」と言う寓話にも出てきます。
 鳥類の中ではトップクラスの社会性を持ち、「カラス語」と呼ばれるカラス独自の言語も研究されています。

 ゴミをあさることでも知られる幅広い雑食性は、同じ鳥類のヒナから甲殻類、それから植物の種子までに及び、カラスが幅広い生息圏を獲得する理由の一つです。
 食べ物の扱いにも知性を見せ、前述したように堅い木の実を車に割らせたり、隠れる場所に持って行ってから後で食べたりする行動が見られます。

 天敵もほとんどおらず、成体はたまに猛禽類などに襲われる程度で、後はタマゴやヒナがヘビなどに捕食されるぐらいです。

 


 道具を作るカレドニアガラス

 

 カレドニアガラスの生息するグランデール島には様々な樹木が分布しており、その倒れた木の中に様々な昆虫の幼体が潜んでいます。
 その幼虫をとらえるためにどうするかと言うと、彼らはまず小枝を拾い、それを破損しない程度に追って「フック状」に加工します、つまり釣り針のような道具を作るのです。
 そしてそのフックで幼虫をひっかけてほじくりだし、ご飯にありつく。……このような行動を取る鳥類は、カレドニアガラス以外には存在しません。

 そして地域によって使用する「道具」は異なると言われており、葉っぱの「葉柄」と言われる部分を使って釣りのように幼虫にかませて引きずり出す行動や、ヤシに似たバンダナスと言う植物の葉に切れ込みをいれ、そこに引っ掛けて幼虫を捕獲する行動が、地域によってさまざまな「文化」として相違を見せています。

 こうしたカレドニアガラスの道具を作る行動は、鳥類学者によって研究が進められています。
 他の個体を単純に真似したのではないか、と思われるかもしれませんが、事実はそう単純ではないようです。

 研究者のローガン氏らが行った実験によると、一方のカラスが特定の行動によって報酬であるエサを獲得した時に、それを観察していたもう一方のカラスは最初その行動を真似していたものの、報酬が得られないとわかると同じ行動を取るのをやめて様々な行動を試してエサを獲得しようとしました。

 そこからローガン氏らは、単純な模倣学習だけではなく、試行錯誤によって、カレドニアガラスの道具を作る行動が形成されるのではないかと言います。
 そしてその試行錯誤が、道具の様々な差異を生み出していると考えられます。

 そしてカレドニアガラスの大人と子供を使ったこの実験によって、子供が大人から学ぶのではなく、大人も子供の行動を見て学習し、カレドニアガラスの「道具の文化」を作っているのだと言う事もわかりました。

 


 まとめ

 

 カレドニアガラスの道具は様々な試行錯誤によって進化しているもののようです。自然の技術者である彼らは、今はニューカレドニアの一部にしか生息していませんが、道具を使いこなすことでいつか世界中に羽ばたく日が来るかもしれません。